「電力自由化」と聞くと、以下のようなマイナスイメージが思い浮かびませんか?
・競争が激しくなることにより各社が設備投資を渋り、電気供給が不安定、停電が多くなるなどの弊害が起きるのではないか
・新電力が参入しても、既存電力会社との圧倒的な事業の規模、能力の差により競争が起こらないのではないか
これら以外にも、様々な不安やマイナスイメージを持っているために、「電力自由化」に対して抵抗を感じ、「電力自由化」そもそもの目的を把握できない人も多いことでしょう。
そこで、ここでは「電力自由化の目的」と「その目的を達成するめのステップ」について取り上げました。
目的を知ることで「電力自由化」に対する不安やマイナスイメージをなくすことができると思います。また、「目的を達成するためのステップ」を知ることで現実味を実感できるでしょう。
以下に、資源エネルギー庁の記事や図をそのまま転載しています。個人的な意見、個人的なまとめ、証拠のとれていない具体例を入れると本来の目的の内容からずれてしまうので、そのままみていきましょう。
電力システム改革の3つの目的
「電力自由化」ではなく、まず最初に「電力システム改革」について把握します。
低廉で安定的な電力供給は国民生活の基盤です。
これまでのエネルギー政策をゼロベースで見直し、安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、そして、家庭をはじめとする需要家の選択肢や企業の事業機会の拡大を目指します。
そのための大胆な改革を、3段階に分け、現実的なスケジ ュールで進めます。
【用語解説】需要家:電気の供給を受ける側の人や企業
この改革を「電力システム改革」といいます。以下に、電力システム改革の3つの目的を具体的に記載します。
目的1:安定供給を確保します
電気が足りない地域に柔軟に供給できるよう、広域的な電力融通を促進します。再エネや自家発電など、多様な電源を供給力として活用しやすくします。
無理なく節電できる仕組みも取り入れて、計画停電に頼らないシステムへと変えていきます。
目的2:電気料金を最大限抑制します
発電のための燃料コストの増加などが電気料金の上昇圧力となっています。競争を促進し、電気の生産や販売を行う企業の創意工夫や経営努力をひきだすことで、電気代を最大限抑制します。
目的3:電気利用の選択肢や企業の事業機会を拡大します
どの電力会社から、どのような電気を買うのか。一般家庭やすべての企業を含め、すべての電気の利用者が自由に選べるようにします。これを企業のビジネスチャンス、イノベーションにつなげます。
電力システム改革の3つの目的を達成するための3つのステップ
上記3つの目的を達成するため、機関の設立や法改正・施行が以下のスケジュールに従って、3つのステップで行われます。
ステップ1が2015年4月「広域的運営推進機関」の設立、ステップ2が2016年4月1日「小売全面自由化」の実施、ステップ3が2020年4月1日「送配電部門の法的分離」の実施になります。
以下に、3つのステップの具体的内容を記載します。
ステップ1:地域を越えた電気のやりとりを拡大します
地域を越えて電気をやりとりしやすくし、災害時などに停電を起こりにくくします。その司令塔として「広域的運営推進機関」を創設します。
ステップ2:電気の小売を全面的に自由化します
一般家庭やすべての企業向けの電気の小売販売ビジネスへの新規参入を解禁します。これにより、電気の利用者なら誰でも、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになります。
自由化しても安定供給や電気料金の抑制にしっかり取り組みます。
料金規制は段階的に撤廃。さらには、セーフティネットとして、必ず誰かから 電気の供給を受けられるようにするとともに、離島にも適切な料金で供給され るよう手当てします。
ステップ3:送配電ネットワークを利用しやすくします
発電した電気を売ったり買ったりするには、送配電ネットワークを使うことが不可欠です。電力会社の送配電部門を別の会社に分離することで、このネットワークを誰もが公平に利用できるようにします。
ここまでが、「電力システム改革」の3つの目的とその3つの目的を達成するめの3つのステップになります。
電力自由化への不安のきっかけを知って不安解消!
「電力自由化」という用語は、TVやインターネットでよく見聞きしますが、上記には出てきていません。
似ているものとして、スケジュールのステップ2にある「小売全面自由化」でしょうか。
確かに、TVやニュースでよく見聞きする「電力自由化が2016年4月スタート」という表現の場合、目的2(電気料金の最大限抑制)を達成するめのステップ2(小売全面自由化)がスタートしたことに当てはまるのは間違いないと思います。
ですが、「電力システム改革」の目的やステップを知らなくても、「電力自由化」という用語から、何となく「電気料金の価格競争のための国の政策がスタートした」のだと予想できてしまうと思います。
そうすると、以下の不安が生じてきてしまうのではないでしょうか。
・競争が激しくなることにより各社が設備投資を渋り、電気供給が不安定、停電が多くなるなどの弊害が起きるのではないか
・新電力が参入しても、既存電力会社との圧倒的な事業の規模、能力の差により競争が起こらないのではないか
これは、「電力システム改革」の目的1とステップ1、目的3とステップ3が欠けた状態です。まさに、「電力システム改革」を把握してないことで生じる不安でしょう。同時に、3つの目的、3つのステップがセットで重要なことが分かります。
ですので、「電力自由化」を「電力システム改革」と同じようなものとして捉えればよいと思います。「電力自由化」は、電気の小売自由化だけでなく、電気の安定供給、競争の公平性を併せ持った「電力システム改革」というふうにです。
今後、「電力自由化が2016年4月スタート」などの表現を見かけたら、「電力システム改革」を背景に小売全面自由化を特に強調しているんだな、と柔軟に自分なりに解釈していけばよいと思います。
でも、このページの題名は「電力自由化の3つの目的と目的達成のための3つのステップ」というより「電力システム改革の3つの目的と目的達成のための3つのステップ」が正しいですよね。
まとめ
電力システム改革は、エネルギー政策をゼロベースで見直して、安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、そして、電気利用の選択肢や企業の事業機会の拡大を目指したものです。
電力自由化は、電力システム改革の3つの目的のうちの一つだったのですが、電力システム改革の他の2つの目的とその2つの目的達成のためのステップを知るだけで、電力自由化に対しての不安や抵抗感は小さくなったのではないでしょうか。
しかしながら、なかなか電気が以前より「安定供給が確保」されるようになったとは感じられないでしょう。また、2020年予定の「送配電分の法的分離」をしたから、公平になったと感じることもなかなかないでしょう。
私たちが実感できるのは、「小売全面自由化」で選択できる電力会社の電気料金プランが多種多様になったことだと思います。
どのような電力会社、どのような電気料金プランがあるか、また、自分の生活にあった電気料金プランがあるかどうか、確認してみてはいかがでしょうか。