2016年4月、一般家庭を対象に電力自由化がスタートしました。
電気料金が安くなるかどうか、いろいろな電気料金プランを新聞や雑誌やインターネットで調べていると思います。
当然のことですが、新電力の電気料金が高いか安いかを知るためには、自分が契約している電気料金プランを基準にして乗り換え先をみる必要があります。
そこで、電気料金の内訳や計算方法について詳しく解説して、ご自身の電気料金への知識を深めてもらいたいと思いました。そうすれば、他社の電気料金は高いのか安いのかを判断するための基準がしっかり出来上がると考えたからです。
ここでは、現在、東京電力エナジーパートナーと契約していて、ご契約種別が従量電灯Bの方々を想定して説明していきます。
下写真の検針票の赤枠内にご契約種別が記載されていますので、ご確認ください。
それでは電卓を用意して電気料金を実際に計算しながら知識を深めましょう。
注意事項:2019年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられました。ここで記載されている単価は、消費税率が8%のときの単価になります。
電気料金で重要な4つの内訳項目
まず、東京電力エナジーパートナーの検針票を見てみましょう。
上写真の赤枠内から読み取れますが、電気料金の内訳として、「基本料金」「電力量料金」「燃料費調整額」「再エネ発電賦課金」の4つが記載されています。
つまり、電気料金というのは、下図に示すように「4つの内訳項目」の合計となっています。ただし、燃料費調整額は、後で詳しく説明しますが、月によって電力量料金に加算されたり、減算されたりするので、±(プラスマイナス)記号になっています。
また、内訳項目の一番下の口座振替割引に関してですが、クレジットカード支払いを選択したら口座振替割引はなくなって、クレジットカード会社からポイントとして還元されます。
クレジットカードは年会費を支払っていたり、年会費無しだったり、一人ひとり違った状況です。また、ポイント還元率も違うでしょう。
さらに、口座振替割引の54円引きを超える還元ポイントの方もいらっしゃるでしょう。この場合は、当然として口座振替割でなくクレジットカードの支払いが良くなります。
当サイトでは、口座振替割引とクレジットカードの還元ポイントは電気料金の計算として検討せず、除外することにします。
最終的に、一人ひとりが割引額として引いてください。
では、先述した4つの内訳項目について、以下で一つ一つ詳しく説明していきます。
「基本料金」を理解しよう
突然ですが、下の写真のような白い四角の平べったい箱が、玄関入り口や部屋の片隅の高いところに取り付けられていると思います。
これは、「ホーム分電盤」と呼ばれるものです。
このアンペアブレーカーに表示されている「〇〇A(読み:アンペア)」という数値は、あなたの自宅(戸建住宅、マンション、アパート)の設計者が、照明、コンセント、エアコンなどの台数や個数から一度に使える電気の使用量の上限を計算した数値になっています。
この数値が一般送配電事業者(電線、電柱、送電線を管理している既存電力会社)に登録されると、電柱から電線が自宅につながります。
あなたの新居や引っ越し先で、東京電力エナジーパートナーや新電力といった小売電気事業者と契約すれば、いつでも電気を使える状態になっているのです。または、東京電力エナジーパートナーと契約して電気を使っている状態でしょう。
この数値は、「契約アンペア」と呼ばれています。
新居の場合は設計者と話し合って、もう少し大きくしたいとか、安くしたいのでもう少し小さくしたいなどの希望の数値にするでしょう。ですが、ほとんどの人は、話し合っていないでしょう。
建物の設計者が決めて、一般送配電事業者に届け出をしてます。変更する場合は十分検討してください。また、マンションなどに住んでいる方は、共有部分が多いため工事業者に依頼して勝手に変更しないように注意しましょう。
検針票にも契約アンペアは、「ご契約」として記載されています。(上記写真と下記写真の数値は参考写真のため異なっています。)
この契約アンペアに対して支払うのものが「基本料金」です。
基本料金は固定されており、毎月同じ金額を支払います。下の表があなたの現在の電気料金プランである「従量電灯Bの基本料金表」です。
見てわかるように、10A~60Aまであります。自宅が大ききれば大きいほど、照明、コンセント、エアコンなどの台数や個数は多くなります。自宅の大きさに比例して数値は徐々に大きく設計されています。
自宅の契約アンペア、基本料金がどのくらいか、まず確認しましょう。上の写真は、ご契約が30Aなので、842円40銭になります。
注意:消費税が8%のときの基本料金にります。
【従量電灯B・基本料金表】
契約アンペア | 基本料金(税込)/月 |
10A | 280円80銭 |
15A | 421円20銭 |
20A | 561円60銭 |
30A | 842円40銭 |
40A | 1,123円20銭 |
50A | 1,404円00銭 |
60A | 1,684円80銭 |
「電力量料金」を理解しよう
「電力量料金」は電気の使用量に対して支払う料金です。ですが、理解しにくい料金体制となっています。それは、電力量料金は、電気使用量に応じて料金単価が上がっていくからです。多く使えば多く使うほど、料金単価が上がっていきます。
下の表が電気使用量に応じて上がっていく電力量料金単価表になります。
注意:消費税が8%のときの料金単価にります。
【従量電灯B・電力量料金単価表】
各段階料金の電気使用量範囲 |
単位 | 料金単価(税込) | |
第1段階料金 | 最初の120kWhまで | 1kWh | 19円52銭 |
第2段階料金 | 120kWhをこえ300kWhまで | 1kWh | 26円00銭 |
第3段階料金 | 上記超過 | 1kWh | 30円02銭 |
表内の表現が、「120kWhまで」や「120kWhをこえ」と分かりづらくなっています。「120kWh以下」や「121kWh以上」なら分かりやすいのにと思うかもしれません。
ですが、電気使用量を計測する電力量計やスマートメーターが小数点第1位まで計測しているので、その数値を正確に表現するためと思われます。
でも、計測する単位が小数点第1位であるにもかかわらず、請求する単位が1kWhとなり小数点はなくなっているので、結局は表現がかみあわず分かりづらくなっているのだと思います。
小数点以下の計測された電気使用量が請求されるか、切り捨てか、引っ越し先で影響してくるかは横に置いといて、当サイトでは、以下のように捉えます。また、「銭」を「円」に変更します。
電気使用量が0kWh~120kWhの範囲では、1kWhにつき19.52円
・第2段階料金の単価
電気使用量が121kWh~300kWhの範囲では、1kWhにつき26.00円
・第3段階料金の単価
電気使用量が301kWh以上では、1kWhにつき30.02円
また、3段階に料金単価が違うようになっているのは、「三段階料金制度」と呼ばれている制度からです。
「三段階料金制度」について、東京電力エナジーパートナーのWEBサイトより引用します。
「三段階料金制度とは」
三段階料金制度とは、省エネルギー推進などの目的から、昭和49年6月に採用したもので、電気のご使用量に応じて、料金単価に格差を設けた制度のことです。
第1段階は、ナショナル・ミニマム(国が保障すべき最低生活水準)の考え方を導入した比較的低い料金、第2段階は、標準的なご家庭の1か月のご使用量をふまえた平均的な料金、第3段階は、やや割高な料金となっています。
計算例として、「ご使用量」が168kWhのときの電力量料金を計算してみます。「ご使用量」とは、1ヵ月間の電気使用量です。
電力量料金の計算式は、「 各段階料金の電気使用量 × 各段階料金の単価」です。
電気使用量が168kWhなので、第1段階料金を超えて、第2段階料金の範囲まで計算することになります。
第1段階料金の電気使用量は、上限の120kWhとなります。第2段階料金の電気使用量は、168kWhから第1段階料金で計算する120kWh分を引いた残りの48kWhになります。
では、電卓で計算してみましょう。
・第1段階料金で計算する電気使用量が120kWhで、単価が19.52円です。
120kWh × 19.52円 = 2,342.40円・・・A
・第2段階料金で計算する電気使用量が48kWhで、単価が26.00円です。
48kWh × 26.00円 = 1,248.00円・・・B
検針票にはAとBの計算済みの値が載っています。
ここでは、第3段階料金までいきませんでしたが、以下に「ご使用量」が350kWhの場合の計算例を記載します。
第1段階料金の電気使用量は、上限の120kWhとなって、第2段階料金の電気使用量は、121kWh~300kWhの範囲いっぱいの179kWhとなります。第3段階料金は、350kWhから第2段階料金の上限の300kWhを引いた残りの50kWhになります。
・第1段階料金で計算する電気使用量は120kWhで、単価が19.52円です。
120kWh × 19.52円 = 2,342.40円
・第2段階料金で計算する電気使用量は179kWhで、単価が26.00円です。
180kWh × 26.00円 = 4,680.00円
・第3段階料金で計算する電気使用量は50kWhで、単価が30.02円です。
50kWh × 30.02円 = 1,501.00円
となります。
「燃料費調整額」を理解しよう
電気は、原子力発電、水力発電、火力発電、太陽光発電などさまざまな方法で作られます。
その中でも、火を起こしてボイラーを焚く「火力発電設備」やジェット機のエンジンを利用した「ガスタービン発電設備」などから電気を作るためには、燃料の原材料である「原油」、「LNG(液化天然ガス)」、「石炭」といった化石燃料を輸入しなければなりません。
しかし、これらは原材料価格自体の変動や円安・円高の影響で、仕入れ値が常に変動します。そのため、仕入れ値が安くなったら電気代を安くし、高くなったら電気代も高くしなければ、採算が合わなくなります。
これら価格変動する差額を電気料金の一部で調整するものが「燃料費調整額」になります。
その燃料費調整額は、過去の燃料価格が用いられて計算されます。
下図がそのイメージ図です。
図の赤色部分を説明すると、まず、1月から3月までの平均燃料価格が計算されます。その平均燃料価格をもとに、損失や払い過ぎがないように電気料金の一部、つまり、燃料費調整額の料金単価へ換算されます。
その料金単価が、2ヵ月後の6月の電気料金に適用されます。
青色、緑色部分についても同じように計算がされ、2ヵ月後の電気料金に適用されます。このような計算がずっと繰り返されて請求せれています。
検針票の中ほどの下あたりに「燃料費調整のお知らせ(1kWh)」として2カ月分の料金単価が書かれています。マイナスになっている場合は、電力量料金から割り引かれることになります。
計算例として、上写真の2016年8月の燃料費調整額の単価が-4円67銭の計算をしてみます。
燃料費調整額の計算式は、「電気使用量 × 当月の燃料費調整額の単価」になります。
168kWh ×(-4.67円) = -784.56円
マイナスなので、この分が電力量料金から割り引かれることになります。
この場合は、電気使用量が多ければ多いほど割り引かれる金額は多くなりますが、マイナスでない場合、そのまま電力量料金に加算されます。
また、新電力の燃料費調整額ですが、東京電力管内で電気を小売りする場合、すべての小売電気事業者は東京電力エナジーパートナーと同じ料金単価になります。
「再生可能エネルギー発電賦課金」を理解しよう
太陽光、風力、地熱などの「再生可能エネルギー」を利用した発電設備によって発電された電気を電力会社が一定価格で買い取る制度があります。
しかし、電力会社が再生可能エネルギーを買い取るための費用は、電気を利用する一人ひとりに、つまり私たちに電気料金の一部として負担させることになっています。その電気料金の一部が「再生可能エネルギー発電賦課金」です。略して「再エネ発電賦課金」とも呼ばれています。
毎年、経済産業大臣が全国一律になるように決めているため、各既存電力会社だけでなく新電力の単価も同じになっています。
計算例として、2016年の再エネ発電賦課金の単価 2円25銭の計算をしてみます。
再エネ発電賦課金の計算式は、「電気使用量 × その年の再エネ発電賦課金の単価」になります。
168kWh × 2.25円 = 378円
電気を多く使用した分だけ高くなっていきます。
まとめ
以上の4つの内訳項目の合計が、電気料金の請求代になります。今まで計算してきた金額をまとめると、
842.40円 +(2,342.40円 + 1,248.00円)-784.56円 + 378円 = 4,026.24円
となりますが、ここでは、口座振替割で54円割り引かれるので、3,972.24円となります。
それから、電気料金の計算ルールとして、最後に小数点以下は切り捨てますので、請求金額は、3,972円(消費税込み)になります。
電卓をもって計算しなれば、なかなか理解できないと思います。ご自身の検針票で計算結果と請求金額が同じになるか確認してみてはいかかでしょうか。
(ご契約30Aで計算しましたが、ご契約が違う場合は、各ご契約ごとの基本料金に変更して、あとは同じ計算になります。)
新電力もこの4つの内訳項目で計算されます。基本料金、電力量料金の各段階料金の単価や範囲が違っているだけです。
しかしながら、新電力はセット割などで更にこの4つの内訳項目から割り引いたり、または、ガソリン代やプロバイダ料金を割り引いたりしています。
ご自身の電気料金が理解できたら確認してみてはいかかでしょうか。